娘の現場を見に、北鎌倉に行ってきました。
北鎌倉駅の山側の改札を出て線路に沿って、細い道を真っ直ぐ来て。
途中に赤いトンネルがあるからそこで待っていて、と娘は携帯電話の向こうで言いました。
赤い小さなトンネルがありました。
山をくりぬいたむき出しの岩の小さなトンネル入り口は赤く塗った古びた門がついいました。
なんとも古風な、レトロな大正時代の名残のような.....。
このトンネルどこかで見たことあると思ったら「千と千尋の神隠し」の千尋が入った異界への入り口のトンネルに似ていましたよ。
入ってはいけないような気がしたのは、赤いトンネルの向こう側がいかにも古びた中華料理屋の敷地みたいに思われましたし、千尋みたいに異界に入ってしまいそうな気がしたからかな....。
トンネルを覗いていたら千が....、いえ娘が光の中のシルエットとなって走ってきました。
このトンネルの向こうに現場があると言います。
ここはただの、皆が通るトンネルなの。
うぉー!!驚いた。岩肌そのままのまだこんなトンネルがまだ生きているのね。
二人並んでやっとのトンネルの長さは20mぐらいあったでしょうか。
トンネルの真ん中に丸い電球が一つだけぶら下がって道は枯葉に覆われ、出口は柔らかな羊歯がレースのように縁取って風に揺れてます。
胸ときめかしてトンネルを出ると、鎌倉時代の風が吹いていました。
トンネルと山に囲まれた小さな谷戸の集落は確かに中世の気配がします。
湿った山の匂い。風に揺れる木々の音。
そこの現場にいる間、もどかしくも、懐かしい気配に胸がざわめいていました。
何か思い出せそうで思い出せないもどかしさ。
ほんの隣の大船に一歩入ってしまったら、もうこの不思議な魅力はどこにも見つからないのですよ、と現場の設計士であるH先生から聞きました。
鎌倉は不思議な魅力に満ちています。
やっぱりあのトンネルは異界への入り口ですよ、お気を付け下さい。