友人のK夫妻と四人で信州へ行った。
奥さんが付き合ってくれなくなったから自分達もスキーをしなくなったよ。一人じゃつまらないものね。あぁスキー、やりたいなぁ....グラスを傾けながら夫達がぼやいた。
そうだ、一緒に春スキーをしましょうか、ということから信州行きが決まったが、私もKさんの奥さんのミサキさんも寒いゲレンデで難儀するスキーより暖かな部屋でごろごろしながら本でも読んでいたい、というものぐさで、車にお菓子や本を積み込んでの出発になる。
1日目のスキーで夫は転びひざを痛めてしまい、結局、優しいKさんのご主人もいいよいいよ、明日は皆でのんびりしようよと言ってくれて翌日はのどかなドライブとなった。
美味しい蕎麦屋はないかと人に聞いて安曇野を走る。
あっちだ、こっちだ、と迷いながらたどり着いた店のコシがあって滑らかなお蕎麦の美味しいこともあったけれど、そこの純朴な御亭主が魅力的だった。
山から下りてくる猿の悪さはともかくもそのボス猿の貫禄と権威はたいしたもんで、うちのに、お父さんも見習えと言われるよ、と笑いながら煮物や林檎を勧めてくれる。
軒先に吊るした餅を取ったり店のガラスまで割って入ってくると言いながら、いやー猿は賢いよ!たいしたもんだ!としきりに感心しているのがおかしかった。
ホテルは白馬のシェラリゾート白馬だった。このホテルも良かった。
林の中の落ち着いたロッジ風の建物も良かったが、自称、売店のおばちゃん、タケダさんの心配りが嬉しかった。朝食後のコーヒーはこちらでいかが?と林の見えるラウンジにソファを並べてくれる。春の芽吹きのすばらしさを聞かせてくれた。夫の足を気遣って病院を紹介してくれる。
二日目の夜は暖炉のある部屋に移って四人で火を見ながらいろいろなことを話す。
人生後半、というより意外と残り少なくなっている私達の残りの人生の日々の過ごし方。いえ、人生をどんな風に考えるかと言うことを。
火を見ながら語る言葉はとても良い。
優しくなって素直になってそして炎に照らされて温かくなって真面目な話をする....。
翌日はKさんの好きな山岳写真家の小さな写真館に行く。
写真館の下にフキノトウを見つけた。
長靴を履いた写真館の職員の人にミサキさんが取ってもいいですか?と聞いた。
良いですよ。降りていらっしゃい。
降りたら小さな小さな鏝が二つ土手に並べて用意してある。
それは山葵を取る道具だよ。それを使ったらいい。
信州の人たちの優しさが身に染みる。
信州が大好きになったよ!
どうして皆優しいの?
信州に住みたいなぁ。
この道を自転車で走りたいなぁ!
やっぱり安曇野が良いよねー。
Kさん、信州に家を建てなさいよ!遊びに来るから...と話しながら信州を後にする。
帰宅してから蕎麦屋の亭主に聞いた蕗味噌を作り、シェラリゾートのタケダさんにお礼の電話をした。
また来てくださいね、新緑の白馬もすばらしいの!電話の向こうでタケダさんが言った。