マントバの鞄屋のショーウィンドウにきれいな皮の財布を見つけた。
良い財布だなぁ、と見ていたら店の奥さんの笑顔と出会ってガラス越しに会釈した。
それから、その店が気になって2日後に店に行った。
店の中には二人の娘さんと、ご主人もいた。
奥さんは私を覚えていてくれて、財布を並べて見せてくれた。
その店は、あまり、品数は多くなかったがバーゲン中だった。
このタイプで小銭が入る財布はありませんか?と問うと
奥さんがちょっと寂しそうに、言った。
実はもうじき店を閉めるのよ。だから、数が無いの。
イタリア製は高くて売れなくて。ええ、でもイタリア製はとっても品質がいいのですけれどね。
私は、財布に日本のお札は入るかな・と一万円札を取り出して入れてみた。
ご主人が言った。
見せて。すごくきれいなお札だね!
光に透かせて皆で「透かし」を見た。
私は嬉しくなって、財布の中を捜して五十円玉をご主人にプレゼントした。
穴の開いたお金が珍しくて、これに紐を通してペンダントにするよ、と笑った。
私は、茶色の財布を二つ買った。
そして、鞄屋の家族皆の写真を撮った。
毎日、財布を取り出すたびに、私はこの小さな鞄屋の家族を思い出すだろう。