ミラノに来てちょっとびっくりしたのは、黒人のガードマンの姿が多いことであった。
真っ白いワイシャツに黒いネクタイ、黒いスーツ姿の背が高くて、素晴らしい体格の黒人が店の入口に立っている。
腕を組んで、少し両足を開いて、にこりともせず黒い顔の中の白く鋭い目が光っている。
グッチ、ルイビトンなどの高級ブランドの店ほど入り口に立つガードマンはそれに比例して筋骨隆々たる大男になるのは面白い。
大変な威圧感がある。
そんな店に入りたくないな、と思う。
店の出入り口には会計を済ませていない商品が通過すると警報音が鳴るゲートがあって、客はそこを通過しなくてはならない。その上に、ガードマンが目を光らせている。
それだけ店は盗難の被害にあっているからだと思うが、ここまで警戒されるのは気持ちがいいものではない。
一人の男性がデパートのゲートを通り抜けたら警報音が鳴った。
ハッとして立ち止まり、不安な思いで遠くから見ていると、ガードマンはその男性の紙袋を取り上げ、一つづつチェックする。多くの人々の視線の中で、服のポケットに入っていないか、調べてレシートを出させる。結局誤報だったようで男性は無罪釈放されたが、別にガードマンが申し訳なさそうに謝る訳でもなかった。
気の毒だった男性がそれについて抗議するでもなかった。
怖くてぞっとした。
しかしこの店で万引きする人は居ないだろう。
今日はお夕飯の生ハムと果物と水を買いに小さなスーパーへ行ったら、スーパーにもガードマンがいた。
おおっ!スーパーにもいる!と思ってカメラを向けたら「こら!」と怒られた。この写真はガードマンがまさに「こら!」と私を指さして怒った時の写真。夫からも「こら!馬鹿、やめろ」と言われた。
どうなのかなぁ…ミラノ。
このような町に魅力があるとは言えないと思うけれど。
イタリアの魅力が無い切ない町、ミラノ。
ね、そうでしょう?と言ったら、「うん」と夫が言った。