予行練習したにもかかわらず、いびつでヒビの入った紅白饅頭が出来た。
十個作ったのに、湯気立つ蒸し器からお皿に移す時、出来立てホヤホヤの白の饅頭を夫が一つ床に落として粉々にした。
だから九個の紅白饅頭。
私と夫の二人が紅白饅頭を作ったのは、長男夫婦に男の子が生まれたからである。私達にとって初孫だ。
お嫁さんのキョウ子ちゃんが退院して実家に戻ったので、私達は娘と合流して町田のキョウ子ちゃんの実家へ赤ちゃんに会いに行った。
ちょっと不細工な九個の紅白饅頭を持って。
彼が生まれたその日を境に、息子とキョウ子ちゃんの顔はすっかり父と母の顔になった。そして私も、おばあちゃんに変身したのだった。
彼が生まれた時、私は決めたことがある。
彼の節目節目に、お祝いの御馳走を心を込めて作ろうと。
いえ、節目でなくともよい。
彼に心を込めて作った料理を食べてもらおう。
お金は心に残らないけれど、手作りのご飯は気が付かぬうちに心の中に刷毛で薄色を重ねるようにあたたかな色に染めてゆくだろう。
ちょっと遠いけれど、機会を見つけて一緒にご飯を食べよう。
彼が三十歳になって、四十歳になって、五十歳になった時、
そういえば、おばあちゃんは俺の誕生日にはいつも赤飯炊いてくれたなって、いつもおいしいご飯を作ってくれたな、って思い出すように。
ああ、おいしいご飯が作れるようになりたいな‥‥