白馬は一面の雪だった。
シェラリゾート白馬ホテルの中庭にかまくらが出来ていた。
私はこのホテルが大好きだ。
六年位前だろうか、春スキーで夫が捻挫した。
その時、ホテルのオーナーのお義母さんの武田さんにお世話になった。
夫の捻挫のおかげで、武田さんと知り合いになることができたのである。
私は武田さんに会いたくて、武田さんお話が聞きたくてこのホテルにやってくる。
武田さんから仕事の話、人生の話、このホテルのたどってきたドラマチックな物語を聞く。
今年は、昨年の白馬の大地震の話を聞いた。
幸い、シェラリゾートホテルは断層から離れていたこともあって被災を免れた。
家が崩壊して住む場所をなくした被災者の方々にシェラリゾート白馬は客室と食事を提供したのであった。
ホテルが百人の被災者に三週間を提供することはなかなか出来ることではない。
しかし、武田さんはその特殊な体験があってこそ見ることができた人間のドラマを私に話してくださった。
武田さんは80歳になられるという。
80歳でなお襟を正し凛と生きる武田さんの姿に、私はたくさんのエネルギーをいただいて、あと二十分で出発する。
本当に美しい白馬。
今日も真っ青な空の下に北アルプス連峰が真っ白く連なっている。
さあ帰ろう。
勇気凛々。
凛と襟を正して。
秋にいっらしゃいな。
カラマツの金色に染まる頃、それはそれはきれいですから。
武田さんが言った。