赤い岩山を登る時、さまざまなサボテンが私達の目を楽しませてくれる。
薄い薄いセロファンを思わせる花びらの色は 黄色であったりオレンジ色に透き通る。
肉厚な葉にぎっしりと細い縫い針のように棘がある。
これが、物凄い棘だった。
細い岩道をよじ登った時、ジーパンのお尻がサボテンに触れたのだと思う。
車に戻ってシートに座るとお尻から腰にかけてちくちくする。
ホテルに戻ってジーンズを脱いでみると、ジーンズに細い針のようなものがたくさん刺さっていた。
お尻を触ってみると何か小さいものが刺さっていることが分かった。
結局、サボテンの棘は、固いジーンズを差し抜いてパンティも差し抜いて、お尻の肉に刺さっていたのであった。七本も!見えない場所だけに毛抜きで抜くのが大変だったこと‥‥
翌日は、足の痛みにジーンズをたくし上げて脛を見ると一本の針が刺さっていた。
その細い針はなかなか抜けなかった。それほどしっかりと肉に食い込んでいたのである。
過酷な土地にあって、水気たっぷりのサボテンの果肉はその荒野に住むウサギなどの憧れの食べ物に違いない。
このように過剰とも思えるほど、棘で防衛しなければサボテンはたちまち彼らに食い荒らされてしまうのだろう。サボテンの横を通り過ぎようとして痛い思いをしたウサギもいただろう。ウサギは自分で棘をぬくことはできない。
しかし、そんな棘で自己防衛をしなくてはならないサボテンも、また哀れ。