十時半に市井原をスタートし、細い、しかし車が通れるほどの山道を歩く。
こんな処にも「山時計」という名の ひっそりとした小さな喫茶店があるのは驚きだ。
スズキさんにお礼のコーヒーを召し上がっていただきたかったが、あいにく「本日お休み」の札がかかっていた。
広いナチュラルガーデン、枯れた薔薇の蔓の向こうにピザ釜が見える。喫茶店の建物ははその佇まいから、オーナー手作りに思える。
オーナーはどんな人だろう。
地元の人だろうか、よそから来た人か。
ここにコーヒー店を作ったその人の少し寂しげな気分が私にも分かるような気がする。
郵便局の小さな軽自動車が登って行ったから、この上にも人は住んでいるのだ。何軒か、人家はあるが、その多くは 荒れた別荘、空家、廃屋である。
道は行き止まりになった。
見過ごしてしまいそうな、細い山道があった。それが鎌倉道だった。
騒めく風に揺れるマテバシイの中の道を歩く。
木漏れ日が揺れる。
サクサクと枯葉を踏みしめて古道を歩く。
まず目指すは、三浦三郎山。
武士達が枯葉を蹴散らし 速足で通り過ぎてゆく。
馬に乗った武士が七騎一列になって下って来る。
ざわざわと木が揺れる 鎌倉道の幻想