日本に戻ってきた。
草だらけの庭。蝉の声。日常も戻ってきた。
旅から帰ってすぐにメリーさんのところへ完熟トマトを買いにゆく。
傷が付いてちょっと格好が悪いからとても安いが、木で完熟した真っ赤なトマトはとても甘い。
これで「水を一滴も使わない完熟トマトのカレー」にすると絶品になる。
さぁ、今日は佐島へ鰯を買いに行こうよ。
日曜日。佐島の漁港前の魚屋は大勢の人が集まっていた。
氷水の中で青光りする小さな鰯はざるに詰め放題で300円の値段が書いてあった。
山盛りの小鰯を買う。これは四日間の私達の蛋白源よ。
旅でお金使ったからこれから倹約生活というわけ。
しかし、その奥に生きワタリガニもあった。
家でワタリガニのパスタが作れると喜んで、値段は高かったがためらうことなく購入。お店の人に子持ちのメスを選んでもらって、これが1050円だった。
家に帰ってからすぐに鰯は手開きで頭と内臓を取る。
10匹は夫がアンチョビにして、10匹はお夕飯のお刺身にする。
残りは全部で60匹あった。全部酢と酒と味醂と薄口しょうゆでゆっくり弱火で25分間炊き込む。ウンなかなか上品な良い味であった。明日から三日間は鰯である。
お夕飯はうちのシェフがワタリガニのパスタを作る。
メリーさんの完熟トマトと子持ちワタリガニを入れてソースを作る。
わーお!、こんなに美味しいパスタは食べたことが無い。
今までの最高峰。
コクのある黄金色のソースはワタリガニの卵が砕けて口に含むと飲み込むのが惜しいくらいの美味しさ。
それはそれは ほっぺたが落ちそうなほど素晴らしい味だった。
鰯のお刺身にお醤油ではなく塩とオリーブオイルをかけて前菜とした。
ああ、三浦半島に暮らすって、幸せだなぁ。これが日常なんだもの。