ハワイへ行くの。
私がそう言ったら、フジモトさんは眉をひそめた。
え?どうしてハワイなの?
あそこはねぇ、見るところ無いのよ。海は綺麗だけれど、つまらない。
フジモトさんは、何十回も世界を駆け巡った方である。
旅に精髄し、旅に哲学を持つ素敵な人である。
ええ、私と夫は世界旅行はもう止めたの。
もう旅の資金と、私の体力は枯渇しました。
でも、夫と約束していたのです。
最後はハワイにしましょうってね。
ハワイなら、体力の消耗も少ないように思えるし。
もっと、先の話だと思っていたけれど、息子一家がハワイへ行くと聞いたから。
孫のハルトが行くなら、ハワイに行くのは今しかない。
大急ぎで付いてゆくことにした次第。
星を見に ハワイへ行こうと思って。
標高4,000mの山の上では怖ろしいほどの満天の星が見れると言う。
魂は光りだと教えてくれたのは、宮大工のムトウ君。
肉体は消えても、魂は光となって時空を飛ぶ。
星は過去の人々。過去の動物達。
何億、何兆の視線の中に包まれてみたい。
無限の金銀砂子の視線の中で、私は何を想うだろう。