イタリアの南海岸のアマルフィに着いたその夕方、海から汽笛を鳴らす船達、ボート、カヌーに守られてアベマリア象がやって来た。
アベマリアが陸に下ろされて白い服の男達に担がれた。
教会の鐘が鳴り続け 海に集まった大勢の人々がアベマリア と歌った。
私はアベマリア しか知らなかった。
大聖堂の階段の下で若くて美しいアベマリアの頭に赤いビロードの小さな王冠がかぶせられ、皆で 大勢で大聖堂の階段をアベマリアと登った。
夜になって アベマリアは再び担がれて小さな街の坂道を皆に囲まれて登った
子供を連れた家族連れ
赤ちゃんを抱いた若いお父さん
車椅子のおばあさん
手を取ってもらって歩くおじいさん
肩を寄せ合う恋人達
皆でアベマリア と歌った
私達はその後ろをついて行った
狭い両側の家の窓にはろうそくが灯されて花びらが散る
白い薔薇
白い菊
皆で歌うアベマリア
私は言葉を知らないからアベマリア しか分からない
でも皆が 何を歌っているか知っていた
この地に平和を
皆が慈しみあって 幸せでありますように
アベマリア アベマリア
この世界に 神様はいるのか?
この世界に 神様はいる
そんなふうに 言い切れるようになって
私は ずいぶん幸せになったように 思う
私の 神様は全てを含んだ神様だから
アベマリアも私の神様
アベマリア
あなたが海からやって来た その日に
アマルフィに来たことを 感謝