五ヶ月もの時間をかけてようやく横須賀の自宅のリフォームがほぼ完了した。
ほぼ というのはまだ玄関とアプローチのタイルが貼っていないから。
一軒の家が建ってしまうほどの時間を要したのは現場が自分の家だったからだろう。今日は工事に行けないよ、という職方さん達にも私は実に鷹揚だったし、今日は新井城跡を歩きましょう!と言いだして大工のムトウ君、エンドウ君、ヤマダ君を現場から引っ張り出す施主兼現場監督だった。
家がほぼ完成した。
春めいた庭に出た。
すると 雀達が集まってきた。
五羽、六羽と次々に集まって来て百羽ほどの雀達は私の前の金木犀の木にとまった。チヨチヨ チヨチヨと甘えた声で雀達が鳴いている。
チヨチヨ チヨチヨ
あのヒトが帰ってきたよ!
雀達は私を見て 帰ってきた!帰ってきた!と鳴いていた。
ただいま 帰ってきたよ!
道種院でオガタさんは、私に どうだここの墓地を買わねえか と言った。
エ?この墓地は道種院が無住の寺になったから皆出て行ってしまったのでしょう?
本堂の横の杉に囲まれた墓地は区画分けされていたが、そのうち三つ四つほどのお墓があるだけの 墓地とも言えないほとんど空き地の淋しげな墓地だった。
違ごうて!区画分けして分譲して売ろうと思ったんさ。そしたら売れんかった。
多分それも何十年も前の昔の話のように思う。粉を吹いて古びたアルミの門扉も黒ずんだ区画のブロックも長い年月が流れたことを語っていた。
一区画七万円だ。安いぞぉ!
七万円?安い!良いなぁ....私、ここが良いな。
墓石なんて造らんでもいいさ。石置いておくとか 木でも良いしよ。
そこに転がっている五輪の塔を持ってこようか。いいえ、やっぱり木がいいですね。
昔のクリスチャンのお墓みたいに木を十字に組んでスッと両腕を横に伸ばしたような 我が墓標。
ビスや釘を一つも使わない私の墓標をムトウ君なら頼めば作ってくれるだろう。
いいですよ 俺で良ければ と笑いながら言って。
チヨチヨ チヨチヨと雀は一列に並んでとまるだろう。
お花もお線香もいりません。
その代わり浅いお皿に水と粟を一盛を置いていただけますか?
木漏れ日の中で仲良く雀達は私の墓を止まり木にするだろう。
チヨチヨとさざめきながら。
私は くすぐったい!くすぐったいよー!と笑ってばかりいるだろう。