旅先の町で必ず行く場所に市場がある。
珍しい野菜や果物の鮮やかさ。
肉やハム、チーズを日本の価格と比較しながら地元の人々の流れの中を歩くのは面白い。
異国では 肉は屠殺、解体されたものが並ぶ。
「処理された」と言う言葉で屠殺をあいまいにぼかしてきれいなパックに包んでしまう日本と違って異国の市場は昨日まで生きていた命を食べるのだという太古からの自然な気持ちを思い出させる場所である。
向こうで怒鳴り声がした。
真っ赤なトマトが積まれた売り台を挟んで二人の大きな男が怒鳴りあっている。
パシン!と頬をたたく音がした。
怒鳴りあいが続く。
また、パシンと音がしてから真っ赤なトマトが一個、宙を飛ぶ。
叩いたほうの男は周りの人から腕をつかまれて引き離され、お向かいの売り場に戻って立ち睨み合う。
なんだ 同業者同志か...夫が苦笑した。
お向かいでアレじゃ大変ね。
でも案外幼馴染の友達なのかもしれないね。あんなにストレートな喧嘩ができるんだもの。
市場の その町の人間くささが面白い。