先日、ケイコさんから素敵な話を聞いた。
一人で秘めておくにはもったいないくらい良い話。
あのね、家の外でポコン、ポコンと音がするの。
ポコン、カコン、ポコン…と音が近づいてくるの。
不思議なその音の正体がわかったのは三日後くらいという。
変な音だなぁ、一体なんだろうと思って外を見たらね‥‥ケイコさんは吹き出した。
あのね、あのね‥‥なんと狸が首にエリザベスを付けていたの。ケイコさんは息も絶え絶えに言ってから我慢できずに笑い転げた。
エッ?狸が首にエリザベスをつけていたって‥‥それは飼っている狸?
そうじゃないのよ!底の抜けたプラスチックの入れ物に狸が頭を突っ込んだらすっぽりとはまっちゃって取れなくなったのでしょう。それでそれを付けたまま歩くと首のプラスチック容器があちこちにぶつかってポコン、ポコン、カコンと音を立てていたわけ。
しかし、優しいケイコさんは、狸が心配になった。
あのままでは餌も取れないし、水も飲めないだろう。そう思って狸を探したのである。狸は見つかった。ケイコさんの家の庭の奥の茂みの中に横たわっていた。
可哀そうに、飲まず食わずの狸は死んでしまった、とケイコさんは思った。
ところが、狸に近づくと、狸は飛び上って、近くの側溝の中に飛び込んだ。生きていたのだ!
そしたらね、なんとプラスチックの容器が大きすぎて、側溝に狸の頭の入ったプラスチックの容器が引っかかってしまったのよ。狸は頭が引っかかったまま身動きが取れなくなっちゃった。私じゃどうにもならなくて‥‥
それで? それで?
うん、119番に電話したの。こういう事情なんですけれど、どうしたらいいでしょうか?って。
そしたらね、そうしたらね!なんと消防署の人が「じゃぁ行きましょう!」って言ってくれたのよ~!!
ケイコさんと狸は顔を見つめあいながら救援を待った。
駆けつけた狸のレスキュー隊は三名。
オレンジ色の制服を着たレスキュー隊は手際よく金バサミでプラスチック容器を切り取って狸を解放し、狸は一目散に側溝の奥へ消えた。
魚の臭いのするプラスチック容器は証拠物としレスキュー隊は持ち帰っていったそうである。
報告書も書いたのでしょうね。「何時何分 三浦市海外町15番地、狸一匹救出」
良い話だねェ‥‥
私、三浦が好きになった。
駆けつけてくれた三名の三浦の消防隊員。ありがとう。大好き。ファンになったわ。
三浦の優しいケイコさん。そんなあなたが大好き。
そして、エリザベス。良かったねぇ。ちゃんとケイコさんとレスキュー隊にありがとうをするのよ。
さて、狸の恩返しは何だろう?
狸だもの、そりゃお金でしょう?
うん、枯葉のね!
三浦が好きになる。
いかにも三浦らしい三浦のお話である。
三浦はほかの町とは全然違う。三浦の魅力は、実はこういうところにある。
だから三浦が好きになる。
こんな風に、大好きな人達、大好きな生き物、大好きな風景が、ひと刷毛、ひと刷毛、色を重ねるように私の中の三浦を染め上げる。
今日の富士山を抱いた三浦の夕焼けも 私の心に ひと刷毛。
私は 三浦が好き