この旅の、私達の本当の目的は、マリーの絵が初めて日本を離れて、アメリカという大きな国へ飛んだことを、この目で見届けることであった。
マリーは日本画を描く。
しかし、彼女が日本画を描き始たのは、そんなに昔の事ではない。美術大学を出たわけでもなく、日本画の教室に通ったこともあったけれど、それはほんの短期間だった。
だから、日本画とはかくあるべき、という枠を持たずに自由に描くマリーの絵は、そののびやかさで見る人の心を打つ。
骨が弱くて、何度も手術を重ね、体のあちこちに金属のボルトを入れているマリー。あらゆる苦難を見事に、マジシャンのように、しかも陽気にプラスに変えていつも挫けそうになる私を牽引してくれたマリー。
彼女の絵が、大空を飛んで海を渡り、ここロサンゼルスの地に着地したことを、確認した。
ロサンゼルスでの日本画院初めての展覧会の会場でとびきりおめかししたマリーとその絵「月とルピナス」の写真を撮る。
マリー、あなたはこれからどんな絵を私達に見せてくれるのだろう?